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■ロック論■


●前書き

 ポケモンカードにおいて、おおまかにデッキの種類を大別すると、どのようなデッキタイプが存在するだろうか。・・・ウィニー系、ステロイド系、ターボ系、リムーブ系、山破壊系、状態変化系、etc・・・。このように、おおまかに別けても色々なタイプのデッキが存在する。しかし、その中でも、ポケモンカード黎明期から存在する強力なデッキタイプがある。・・・「ロック系」デッキである。
 ロック系デッキと言うと、じわじわ甚振るイメージ、上級者が使用するイメージ、プレイングが小難しいイメージ、といった事が頭の中に定着しているかと思う。・・まあ実際、プレイングが難しいロック系デッキがあるのは確かである。ただ、全てが全てプレイングが難しいデッキという訳ではない。
 そもそも、ロックデッキという概念がよく判っていない、先入観のみで意味を履き間違えている人が意外に多いのかもしれない。

 という訳で、今回はロックデッキについてのお話です。
 

●What's ロック?

 まずは、ロックデッキの概念について説明する。「lock(ロック)」には、"鍵を掛ける"、"動かなくする"といった意味がある。・・・ならば、ロックデッキは、相手の動き(の一部)を止める、束縛するという事となるが、ちょっと違う。確かに、相手の動きを止めたり、束縛したりするデッキはロックデッキではあるが、その逆で、全てのロックデッキが動きを止めたり、束縛したりするデッキとは・・必ずしも言えない。
 そこで、前回書いたリソースの観点から説明すると、ロックとは、「相手の何らかのリソースの価値を減少させる、または0にする」という事である。つまり、ロックデッキとは、相手のあるリソース価値を減らす事により、相対的にアドバンテージを得る事で勝利するデッキなのである。
 

●ロックタイプの説明

 ロックデッキは相手のリソースを封じて戦うが、封じるリソースは様々である。これからは、ロックするリソース別に簡単に説明をしていく。
 
(1) トレーナーロック
 ドローカードをはじめとして、トレーナーカードは全てのデッキに入っているカードであろう。トレーナーカードの恩恵が無ければ、高速で場を展開する事や、特定のコンボを発動させる事、はたまた勝負を決める一手など、トレーナーカード以外のリソースを使って実現する事はなかなか困難である。・・もし、自分だけトレーナーカードの使用が出来なくなる、あるいは制限されるとどうなるか。
 まず、ドローカードが使用出来なくなることによるハンドアドバンテージの差が出てくる。前回のリソース論でも書いたが、色々なリソースを生み出す時、手札を介して行うのである。そうなると、場の展開に壊滅的な打撃を受ける。他にも、トレーナーカードを用いたコンボデッキも大元のコンセプトが崩されることになる。このように、トレーナーロックは、相手のハンドリソースを奪ってハンドアドバンテージを得る事によって、壊滅的な被害を与えて勝利するのである。

 ちなみに、トレーナーロックには大きく分けて2種類の方法がある。一つは、トレーナーカードの使用を制限・禁止する方法。もう一つは、手札からトレーナーカードを消し去る方法。
 前者の方法は、トレーナーカード自体のリソース価値を減らす事でハンドリソースを奪うという事である。当然、ロックとしてはこちらの方が完全ロックとなるので強い。「錯乱ジム」、「悪いラフレシア(R)」などがこれに該当する。
 後者の方法は、直接的にハンドリソースを奪っていくのである。もちろん、この方法は常に相手の手札にリソース価値のあるトレーナーカードが無い状態を作らなければならないので、簡易的なロックと言える。「ミニスカート」、「ロケット団のおねえさん」などがこれに該当する。
 
(2) エネルギーロック
 エネルギーカードは、1ターンにつき手札から1枚しか場のポケモンにつける事が出来ない。そして、ポケモンの持つ技は、一般的にエネルギーが多く必要な物ほど(攻撃力が)強い。それ故、定期的に相手の場のエネルギーカードを消す事、あるいは手札に戻す事が出来れば、攻撃力において大きな差が出てくる。
 もし、自分のターンに毎回、相手の場のエネルギーカードを1枚消すこと、手札に戻すことが出来るのなら、相手は現状以上のエネルギーカードを場に出せない。そして、毎ターン相手の場のエネルギーカードを2枚以上消す事、手札に戻す事が出来るのなら、相手の場のエネルギーカードは段々と減少していく。そして、最終的には、相手の場からエネルギーカードを全て無くす事も可能である。
 ・・・このように、相手の場からエネルギーカードを消していく事でエネルギーアドバンテージを得て、最終的に相手のポケモンを行動不能に陥れて勝利するのが、エネルギーロックである。
 
(3) 進化ロック
 ポケモンカードゲームにおいて、ポケモンは戦闘を行う為の唯一の手段である。その為、ダメージを与え、相手のポケモンを倒すには、ポケモンが強くなければならない。・・・ポケモンを強くする(攻撃力を上げる)方法は大きく分けて2点。エネルギーカードをつけるか、ポケモンを進化させるか・・・。
 一般的に、ポケモンは進化させることによって、攻撃力やHP等が上昇する。また、強力なポケパワー等の特殊能力を使用する事も出来るカードも存在する。それゆえ、進化ポケモンをメインパワーソースにするデッキや、その進化ポケモンのポケパワーに頼ったデッキが多々存在する。
 ・・もし、ポケモンを進化させることが出来なくなったら。・・・進化が出来なくなるのは、ある種のデッキのコンボ要素を破壊したり、攻撃力を強化する事が不可能になるばかりではなく、ポケモン自身の耐久力を強化する事も出来なくなる。進化前の種ポケモンは基本的にHPが低い。よって、早い段階で進化ロックをかけられると、攻撃力が無いのはもとより、HPの低さによる耐久力の無さで、相手プレーヤーにいとも簡単にポケモンを倒されてしまう。こうなると、もう敗戦の色は濃い。
 また、進化カードや「ブーストエネルギー」、「ふしぎなあめ」、「超古代の技マシン各種」など、進化ポケモンにしか使えないカードがいくつか存在する。つまり、進化ロックによって、それらのカードのリソース価値を0にしているのである。微々たるかもしれないが、進化ロックはハンドアドバンテージも得ているのである。
 「プテラ(化石)」は、ベンチにいても完全に進化を止める事が出来るため、昔からよく使用され、殿堂ポイントは3点を掛けられている。
 
(4) 特殊能力ロック
 特殊能力(ポケパワー・ポケボディー)には、色々な効果がある。エネ加速やドロー加速をする能力、特定のポケモンから攻撃を受けない能力、トレーナーカードや進化などのある物の使用・行動を拘束する能力など、多種多様である。そして、それらの多くがトレーナーカードでは実現出来ない効果である。それ故、大会でも特殊能力をコンボ要素として使用しているデッキや、特殊能力に大きく依存したデッキが多々使用されている。今では、特殊能力を持ったポケモンを入れていないデッキは珍しい。それだけ、特殊能力が有用なのである。

 ・・・さて、このような情勢の中で特殊能力の使用が封じられた場合、一体どうなるであろう。・・・これは、デッキの特殊能力への依存度によって、大きく被害が異なる。
 まず、ある種のコンボデッキにとっては死活問題である。「かえるのうた」が使えないトノスフィアに誰も脅威を感じない。・・まあ、そうでなくても、特殊能力を攻撃の為に使用しているデッキ(特にエネ加速やエネ移動を行う)は被害が大きい。例えば、バシャコロロレックなんかはそうである。エネ加速の要である「バシャーモ(ADV1)」が機能しないという事は、攻撃力がガタ落ちする事を意味する。また、「エネコロロ(ADV1)」によるドロー加速も行えない。直接的にアドバンテージを得る手段を特殊能力のみに依存している故、多大な被害になる。
 また、特殊能力によって、ある種のポケモンからの攻撃を無効化するポケモンを紙屑と化してしまう。ex対策の「ソーナンス(ADV2)」や「キュウコン(ADV4)」、対進化ポケモン対策の「ヌケニン(ADV3)」、といったようなカードの価値が限りなく0になる。
 ・・・少なくとも今のデッキ情勢を見る限りだと、特殊能力を封じられることによる被害は相当大きいものになるだろう。
 
(5) ダメージロック
 ところで、ポケモンカードゲームでの勝利条件とは何か。・・サイドカードを全て引く、相手の場からポケモンを無くす、相手の山札が切れるなどあるが、このうち主な勝利条件は、「サイドカードを全て引く」、「相手の場からポケモンを無くす」・・・この2点である。しかし、これらの勝利条件を満たすには、自分のポケモンの攻撃で相手ポケモンのHP以上のダメージを与えて倒さなければならない。・・・しかし、その攻撃でダメージを殆ど、あるいは全く受けなかったり、ダメージを受けたとしてもすぐに全回復されてしまったりしたら・・・。相手はポケモンを倒す手段が無くなり、勝利条件を満たせない。そうなると、「自分は負けない」=「自分は勝つ」という方程式が成り立つのである。
 このように、相手の攻撃を完全無効化して相手に勝利させないのが、ダメージロックである。
 ダメージロックは相手の攻撃を無効にする。しかし、こちらの攻撃は無効になっていない。という事は、毎ターンこちらの攻撃だけが相手に当たっているのである。つまり、相手の攻撃を無効にする事によって、ターンアドバンテージを得ているのである。

 01'夏の「no water」、02'春の「ゲンラッキー」、02'夏の「ハッサム」、03'夏の「ヌケニンゲンガー」。このように、意外にもこのタイプのデッキは公式大会によく出現している。
 

●ターン破壊

 さて、徒然とロックの種類について色々と書いてみた。ところで、前回書いた「リソース論」内の7つの主要リソースの中で、どのリソース価値を奪うのが一番強力だろうか。・・・おそらく、それはターンである。つまり、相手にターンが来なくて、自分の番が毎ターンやってくれば、山切れを起さない限り必ず勝利出来るはずだ。つまり、ターンリソースを奪って、ターンアドバンテージを得る事は、極めて強力なロックデッキとなりうる。
 だが、実際にはターンを得るカードは存在しないし、ターンを飛ばすカードも存在しない。しかし、ターン内の行動の一部を封じれば、それはターンリソースの価値を減らし、自分がターンアドバンテージを得る事になる。
 ・・・では、ターンではプレーヤーは何を行うことが出来るだろうか。言い換えれば、ターンというリソースから何を得ているのだろうか。・・具体的には、以下のような事を行う。

  ・山札からカードを1枚引く。
  ・ポケモンを進化させる。
  ・手札からトレーナーカードを使用する。
  ・手札からエネルギーカードをポケモンにつける。
  ・ポケパワーを使用する。
  ・ポケモンが攻撃を行う。


 これらの一部を封じれば、ターンリソースの価値を減らす事が出来る。・・・気付いた人もいると思うが、そう、これらの事項は全て上に述べたロックによって封じる事が出来る。つまり、上に書いたロック方法は、実はターンリソースも一緒に奪っているのである。故に、ロックデッキが強力だと呼ばれるのである。
 裏を返せば、何かを封じるロックデッキの場合、ターンリソースの価値を減らす事が出来なければ、強力なロックデッキとは言えないのである。
 

●受動的ロック

 ここまで、相手の動きを束縛するロックデッキの説明をしてきた。これらのデッキは、完全なロックを掛ける事により、壊滅的な被害を与えてアドバンテージを得るという戦法を取る。・・・だが、ロックデッキは、相手の動きを束縛して勝ち筋を得るタイプだけではない。
 つまり、相手の動きを束縛するのではなく、相手が動きを止めざるを得なくする状況に追い詰める事も一種のロックと言える。冒頭で示したように、相手の何らかのリソース価値を減らす事がロックである。行動しようと思えば行動出来るが、行動をする必要が無かったり、行動をする事によって逆に不利になるので行動出来ないといった状況を作り出すのである。意外にも、この種の状況を作り出すカードは多く存在する。

 例を挙げて説明する。まずは「ノクタス(ADV2)」。ノクタスの技「だましうち」は、場のポケモン1匹に40Dを与える事が出来る。もし、ノクタスに3エネついている状態で手札からHP40の種ポケモンを出せるだろうか。・・・答えは殆どの場合でNOであろう。出そうと思えばベンチに出せるが、出した次のターンに、ノクタスによって狙撃されるから、大抵の場合出すことはない。このように、出すことを束縛していないが、出せない状況を作り出しているのである。つまり、HP40以下の種ポケモンのリソース価値を0にしているのである。

 また、ノクタスには、ポケボディーとして「トゲトゲどく」を持っている。このポケボディーは攻撃した相手を毒状態にする為、ノクタスに対し、少ないダメージで何回か攻撃して倒そうとは通常はしない。大抵は一撃でノクタスを倒そうとする。それは、毒状態になっている時間を少しでも遅らせる、短くさせるためである。攻撃ポケモンの最大出力がノクタスのHP以下なら攻撃をするだろうが、ノクタスのHP以上の攻撃が出来るのなら無理に攻撃をする必要が無い。このように、攻撃する事を拘束していない(攻撃が当たらない訳ではない)が、攻撃できない(攻撃する必要性が無い)状況を生み出しているのである。攻撃機会を得るターンリソースの価値を減らしているのである。

 もう一例、「サーナイトex(ADV2)」について。サーナイトexの技「サイコストーム」は、お互いの場のエネルギー数×10のダメージを与える。さて、サーナイトexがサイコストームを打てる状態で場のポケモンにエネルギーをつける事ができるだろうか。・・・既に、自分のポケモンのHP以上に場にエネルギーが存在したりするなら話は別であるが、自分のバトルポケモンのHPよりぎりぎり足りない状況で場のエネルギーカードをつけるのはなかなか決断しにくい。特にサーナイト側は、エネルギー加速手段があるので、余計にエネルギーカードをつけづらくしている。このように、エネルギーカードを場のポケモンにつける事を拘束していないが、エネルギーカードをつけにくくする状況を作り出し、手札のエネルギーカードの価値を減らしている。

 他にも、「デンリュウex(ADV3)」、「サーナイト(ADV1)」、「ボーマンダ(ADV3)」、「バシャーモex(ADVex1)」、「砂漠の遺跡」などのように、行動しにくくする状況を作り出すカードは多く存在する。これらのカードは、自発的に何かを封じている訳ではない。ある条件が揃った時に初めて、相手が勝手にロック状態になってしまうのである。
 これらのカードも、ロックカードの一種である事を明確に理解しておくべきである。そうすれば、自然とロックが掛かっていた物が、自分からロックを掛ける事が出来るだろう。意識的にそのようなロックをする事が出来れば、相手にとって戦いづらい事この上ないだろう。
 


・・うーん、ロックの専門家じゃない人間が書くと変な文章だな。


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