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■ストーリー論■


●前書き

 前回も冒頭に書いたが、ポケモンカードゲームにおける強さの3要素のうち、「デッキ構築」というのは最もプレイヤーの力量を問うものである。前回は、シナジーという観点からデッキ構築を考えてみたが、今回は別の観点からデッキ構築を考えてみたいと思う。
 そもそも、デッキ構築というものは、「どのような事を行いたいか企画をし、それを実際に設計し、最後に調整を行う」という手順を踏む。あなたが、デッキを製作する場合、まず何かしらのデッキのメインアイデアを決めることから始めるだろう。・・・しかし、メインアイデアを決めただけでは、良いデッキを作ることは出来ない。良いデッキというのは、まず明確な勝ち筋が存在し、そしてそれに至る良いプロセスが必ず存在するのである。そのプロセスの企画・設計こそが、デッキ構築における要なのである。

 という訳で、今回はデッキ構築におけるストーリーについてのお話です。
 

●What's ストーリー?

 まず、この話の前に、ストーリーという言葉について説明する。当たり前の事ではあるが、「story(ストーリー)」には"物語"という意味がある。・・・では、デッキ構築における"ストーリー"とは一体どういうことであろうか。
 デッキ構築における"ストーリー"とは、デッキの展開・流れを意味する。つまり、「どのような手順で何を行うか」という事を明確にするということ・・・言うなれば、デッキのフローチャート(流れ図)を作成する事なのである。もっと単純に言えば、「何をしたいのか」と言う事を図式化・文章化する事である。
 

●ストーリーの意義

 さて、デッキ構築において、ストーリーという概念を考える事のメリットとは、一体何だろうか。

 まずは、デッキの流れが判る為、どのようなカードを入れるべきか、という事を決める事が出来るという事だろう。・・・何だ、当たり前の事ではないかと思ってしまう人も多いだろう。だが、それだけにこの事はとても重要なのである。ポケモンカードは数百種類・数千種類もある。そのカードをある程度絞れるだけでも素晴らしい事である。・・・ただ、それだけなら、あまり有り難味を感じられない。そもそも、ポケモンカードには、トレーナーカード、エネルギーカード、ポケモンのカード等の大別があり、さらに、デッキに入れられるカードの枚数は制限されている故、入れられそうなカードはある程度絞られている。

 では、一体何がメリットなのか。・・・冒頭でストーリーとは、デッキの流れ・展開を意味すると書いた。その為、ストーリーには、起承転結とまでは言わないが、ストーリーの内容にある程度の一貫性がある。つまり、ストーリーを考えてデッキ構築しようとすると、デッキ内のカードの束がある一貫性を持つようになるのである。
 当然ながら、この一貫性を持つという事は重要である。デッキ内のカードが、話の内容と全然一貫性が無ければ、話は脱線するばかりで、いつまで経っても結論に達しない。そのような状況では、相手の話の方が先に終わってしまうだろう。
 だが、もし、ストーリーの内容とデッキ内のカードとの間に一貫性があるのなら、話はスムーズに運ばれるだろう(当然、ストーリーに無駄が多かったり、矛盾点があったりしたら意味はないが・・・)。つまり、ストーリーを考えてデッキ構築をすることによって、デッキ内のカードがある一貫性を持つ集合の束となりえるのである。
 

●ストーリーとデッキ構築

 では、ストーリーについてもう少し踏み込んだ話をしよう。

 冒頭にも書いたように、あなたがデッキを構築する時、まず、デッキのメインアイデアを決める事から始めるだろう。「あるカードやコンボをデッキの核にする」という考え方が最も単純で判りやすいが、別に、「メタデッキに勝てるデッキ」という目標でも良い。とにかく、自分がデッキで行いたい事(メインテーマ)を決める事である。
 さて、デッキのメインアイデアを決めた後は、実際にアイデアを元にデッキを形作る作業となる。メインアイデアと相性の良いカードやよく似た効果のカードからメインアイデアにふさわしいカードを洗い出す作業になる。・・・そう、デッキ構築におけるストーリーという概念は、この段階で初めて効果を表すのである。
 そもそも、デッキ構築と言うものは、デッキの動きを想定しながら作っていくのである。即ち、デッキの行いたい事をはっきりさせる事なのである。そして、ストーリーは、デッキの行いたい事に対し、どのような手順を踏んで行うか、その筋道を立てる事である。・・・つまり、ストーリーとは、"デッキの行いたい事"という漠然とした「イメージ」を"デッキ"という「形ある物」にするための変換器的要素のような考え方である。

 従って、ストーリー作成は、デッキ構築における第1段階と言ってもよい。 当然ながら、ストーリー作成を怠れば、明確なストーリーを定める事が出来ず、何を行いたいのか全く判らないデッキが出来る事になるだろう。そのようなデッキがどのような結末を迎えるかは・・・語るまでもないだろう。
 

●良いストーリーとは?

 ここまでは、ストーリーという考え方の概念について簡単に書いてきた。だが、ストーリーの有効性がいくら判っていても、肝心のストーリー自体が良いもので無ければ全く意味がない。・・・そこで、私なりに考えた良いストーリーの為の要件を幾つか挙げてみる事にした。ただし、これはあくまで私の経験上での考え方の1つである。本来なら、優秀なデッキのスキームやストーリー等をいくつか見る事によって、経験的にどのようにストーリーを立てるか理解するものである。その為、多少なりとも個人個人によって、考え方が違うだろう。従って、以下の文章は、ストーリーの考え方の1つとして捉えて頂きたい。
 
(1) 勝ち筋の決定
 まず、最も大事な事として、デッキの勝ち筋を決定する必要がある。ものすごく当たり前の事ではあるが、よく初心者のデッキとして、メインアタッカーが何種類もいて、勝ち筋が全く分からない事がある。そうでなくとも、何でもかんでも強いカードを詰め込めばいいという訳ではない。明確な勝ち筋が存在するからこそ、デッキに1つの目標を達成する為の一貫性が備わるのである。
 
(2) 初期展開の手法
 次に考える事は、初期リソースからどのようにデッキを展開していくか、ということである。これは、後述するアドバンテージ獲得の手法と同じ事を言っているのだが、現環境においても、序盤における展開は非常に重要な事である。そもそも、初期リソースは限られたものである。初めから、リソースを多量に獲得できる基盤など存在せず、初期リソースだけでは自分のデッキの行いたい事が出来ない。その為、多量のアドバンテージを獲得、つまりは自分のデッキの行いたい事をする為には、初期の展開が重要なのである。
 なお、ここでの展開とは、場の展開である。ドローであったり、ポケモンを場に出したり、進化させたりする、いわゆる"場の構築"である。この過程においては、いかに、リソースを増やしていくかという事に焦点が絞られているのである。
 
(3) アドバンテージ獲得の手法
 次に重要な事は、アドバンテージの獲得方法である。対戦で勝利をする為には、必然的に相手よりも多くのリソース面でアドバンテージを得る事が重要になってくる。その為、圧倒的なリソース獲得、徹底的なリソース破壊、多くのリソース面でのアドバンテージ獲得の重要性がある。
 さらに、当たり前ではあるが、獲得したアドバンテージをうまく勝利条件に結びつかなければ意味がないのである。その為、勝利に直結するような重要なリソースとあまり勝利に直結しないような不必要なリソースとに別ける事が出来る。
 つまり、リソースの重要度に優先順位がつくのである。当然ながら、勝利に直結するような重要なリソースにおいて、アドバンテージを得る事が大事であるというのは言うまでもない。
 一般的に見ると、多量のハンドアドバンテージをもたらす「ピジョット(PCG1)」や「エネコロロ(ADV1)」、エネルギーアドバンテージをもたらす「バシャーモ(ADV1)」等がよく用いられている。
 
(4) 理想展開の定義
 さて、ここまで順に「勝ち筋の決定」、「初期展開の手法」、「アドバンテージ獲得の手法」と書いてきた。この3つを順に明確する事によって、デッキにある流れが見えてくるのが判るだろうか。・・・すると、理想としては、何ターン目に何が出来ると良い、と言ったイメージが生まれてくるかと思う。
 良いストーリーのデッキというのは、理想的に回ったときに、「いつ頃に何が出来るのか」という事がプレイヤーが明確に判っているはずなのである。そしてまた、良いストーリーのデッキというのは、デッキを見た瞬間に回ったときのイメージが想像出来るはずなのである。

 では、ここで一つ、デッキのストーリーの良し悪しを調べる為の簡単な質問をしよう。
 「理想的な初手の7枚は何か?」・・・これがすぐに言えないようなデッキは、デッキの動きを理解出来ないという事である。つまり、これがすぐに判らないという事は、ストーリーがよくない(又は、プレイヤーがデッキを理解していない)証拠なのである。
 

●ストーリー破壊

 ところで、このデッキ構築のストーリーであるが、実はデッキ構築以外にも役立つのである。自分のデッキにストーリーがあるように、当然ながら、相手のデッキにもストーリーが存在する。冒頭で、ストーリーとは、デッキの流れ・展開であると説明した。つまり、相手のデッキのストーリーが判ってしまえば、現在の行動がストーリーのどの部分・段階であるかを推測することが出来る。そして、その部分でのキーカードを倒したり、消したり、行動不能・無効状態にする事により、相手のデッキ展開を著しく遅らせる事が可能なのである。・・・これがストーリー破壊である。

 こう書いたが、おそらく何を言いたいのか、さっぱり判らないだろう。そこで、例を挙げて説明をしてみる事にする。と言うわけで、前回に引き続いて「カメレアコロロ」を例にとって説明する事にする。eシリーズがスタンダード環境下で使用不可な為、現環境では使えないデッキですが、説明の為という事でご了承ください。では、夏道時点で私が調整していたカメレアコロロはこちらである。

 まず、このデッキのストーリーを考えてみると、以下のようになる。
1. ノコッチでポケモンを場に展開

2. エネコロロの「エナジードロー」、ジャグラー、TVレポーター等のドロー基盤から、場の構築と共に基本エネルギーをトラッシュに落下

3. レアコイルの「じきコントロール」でトラッシュからエネルギーを手札に回収

4. カメックスexの「エナジーレイン」によって、エネルギーカードを大量に場に装填

5. レアコイルの「マグネットフォース」で高出力攻撃

6. 以下、3〜5の繰り返し
 このように、デッキの流れが判れば、自然と弱点も見えてくる。

 まず、最序盤において、エネコロロを行動不能状況にする事。手順2の段階において、エネコロロは場の展開を一手に行う、最も重要なキーカードである。これを止められると、展開に数ターンの遅れを生じたり、場合によっては、完全停止する事もまま見られる。
 また、手順3以降においては、カメックスexとレアコイルがデッキのキーカードとなるが、レアコイルはエネ供給と攻撃を兼ねている(手順:3,5)。つまり、レアコイルがこのサイクルでの最重要カードであり、こっちを重点的に狙うべきなのである。ただし、カメックスexは倒せばサイドカードを2枚引けるので、状況によってターゲットを変更すれば良い。
 そして、エネコロロもカメックスexもレアコイルも、ポケパワーを使ってストーリーを展開するので、全体的な弱点としてPPLに弱いのである。

 もちろん、この考え方は一般論としての考え方であり、相手の場の状況によっては、必ずしもストーリーを破壊する事が最優先とは言えない。極端な話、手順2の段階で、相手の場にエネコロロが4体立っている状態であれば、エネコロロを攻撃するということは普通はしないだろう。
 ストーリー的には、エネコロロを攻撃するのがベストかもしれないが、あと3体もいるので、1体倒してもストーリーは全く崩れないだろう。その場の状況判断は常に大事なのである。この辺の駆け引きになってくると、ブラフ等も重要になってくるが、今回の話とは掛け離れた内容となるので割愛する。
 

●幻影物語

 ここまで、ストーリーについて徒然と書いてきたが、最後に大事な点を一つ。

 さて、物語は書き上げた。その物語が完成するように、カードを入れる。・・これで、完璧なデッキの完成だろうか。・・・答えはもちろん"NO"である。
 ここで注意して欲しいのは、あくまで"物語は物語である"という事である。理想は理想であって、所詮は幻影物語なのである。物語通りにデッキを作っても、必ずしも確実にデッキのポテンシャルが100%発揮出来る訳ではないのである。あくまで、このストーリーという手法は、デッキ構築における第1段階、即ち企画段階に過ぎないのである。

 そのデッキが、単なるファンデッキとなって終わるのか、それとも、環境下最強のデッキとしてメタゲームの中心デッキとなるかは、設計段階、あるいは調整段階を経て決まるのである。少なくとも、ストーリーを決定した段階では、デッキの良し悪しが完全に決まるものではない。どんなに、良いストーリーを考えても、それを実現するようにカードを選定し、デッキを構築出来なければ意味は無いのである。
 しかし、ストーリーを明確にする事によって、初めて強いデッキを製作する事が可能となるのも事実なのである。おそらく、様々な可能性を秘めた多くのデッキが、設計・調整段階で消えていく運命になるだろう。また、実際に回してみて、強さの期待を裏切られる事も多々あるだろう。

 しかしながら、このデッキを作成したという経験は必ずあなたの中に残る事になる。その経験の積み重ねこそが、ストーリー作成、はたまた、デッキ構築において重要な指針となるのは言うまでもない。
 


今回の話も、中級者以上にとっては当たり前の話だと思います。
ただ、抽象的な内容の話なので、ちょっと判りづらい所もあるかもしれません。文章能力が無くて申し訳ないです・・・。


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